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コラーゲンの性質

コラーゲンとは

コラーゲンとはタンパク質の一種です

コラーゲンとは線維芽細胞(せんいがさいぼう)から細胞外に分泌されるタンパク質の一種です。その強靱な繊維としての性質上、人間をはじめとする実に多くの動物において、体全体、もしくは臓器の支持、補強、境界形成などの重要な役割を担っています。

コラーゲンは全身のあらゆる臓器に存在していますが、特に皮膚、骨、軟骨、腱、血管壁などに多く分布しています。また人体の全てのタンパク質のうち、約1/3はコラーゲンといわれています。コラーゲンに分類されるタンパク質は1種類ではなく、その亜型を全て含めると現在20種類発見されています。

皮膚の場合、真皮の乾燥重量のうち約70%をコラーゲンが占めています。コラーゲンの種類としてみても、10種類以上が皮膚に存在します。しかし、実際のところ真皮を構成する大部分(約80%)はたったの1種類で、それは「I型コラーゲン(いちがたこらーげん)」です。I型コラーゲンは主に真皮網状層に存在し、HE染色された皮膚標本をでは太いピンク色をした線維として見ることができます。

次に多いコラーゲンは、「III型コラーゲン(さんがたこらーげん)」で約15%存在します。III型コラーゲンは真皮乳頭層や血管・皮膚付属器(毛器官、汗腺など)の周囲に分布しています。HE染色された皮膚標本では淡いピンク色をした微細な線維として見ることができます。

コラーゲン注入として治療に用いられるのは、主にI型コラーゲンです。そこで次はこのI型コラーゲンについてもっと詳しく見て見ましょう!

コラーゲンはこうして作られる

コラーゲン注入に利用されるコラーゲンは、主にI型コラーゲンです。ここではI型コラーゲンが生体内でどのように産生されるのかについて解説しましょう。

皮膚I型コラーゲンの分子は線維芽細胞で「プロコラーゲン(コラーゲンの前駆体)」として作られ細胞外へ分泌されます。細胞外で酵素によってプロコラーゲンの両端が切断されるとコラーゲン分子が完成します。これを「トロポコラーゲン(下図)」といいます。

トロポコラーゲンは長さ約300nm(ナノメートル)、直径約1.5nmという細長い棒状の形をしています。
300nm=0.0003mm
1.5nm=0.0000015mm

このI型コラーゲン分子は単純な一本の棒ではなく、アミノ酸が約1000個連なったポリペプチド鎖3本が螺旋状に組み合わさり立体構造を作っています。ポリペプチド鎖におけるアミノ酸配列は非常に特徴的で、「ー(グリシン)−(アミノ酸"X")−(アミノ酸"Y")−」というようにグリシンが3塩基ごとに繰り返す構造を有し、この配列は「コラーゲン様配列」と呼ばれています。アミノ酸"X"にはプロリン、アミノ酸"Y"にはヒドロキシプロリンが頻繁に存在しています。ポリペプチド鎖1本の分子量が約10万なので、トロポコラーゲンの分子量は約30万となります。

3本のポリペプチド鎖が螺旋状になっているのがトロポコラーゲンですが、螺旋状を呈している両端は鎖がほどけた様な構造でアミノ酸配列が異なる部分が存在します。この部分を「テロペプチド」といいます。

真皮内ではたくさんのトロポコラーゲンが集まり、規則的に並んで結合し繊維状になります。これを「コラーゲン細線維(こらーげんさいせんい)」といいます。直径は100〜500nmです。コラーゲン細線維を電子顕微鏡で見ると規則的な横縞模様が見えます。横縞の周期は67nmで、トロポコラーゲンが1/4ずつ縦方向にずれて規則的に会合(結合)しているために生じる模様です。この会合の際に重要な役割を担っているのが、前述したテロペプチドです。テロペプチドが隣のトロポコラーゲンの螺旋部分に結合することによって強固な結合が形成されるのです。

真皮網状層ではコラーゲン細線維が更に多く集まり、非常に太く強い繊維が形成されます。これを「コラーゲン線維束(こらーげんせんいそく)」といい、直径は2〜15μm(まいくろめーとる)になり光学顕微鏡でも十分に観察することができるようになります。
15μm=0.015mm

コラーゲン注入に使われるコラーゲンとは?

これまでにコラーゲンが生体内で生成される一連の流れを述べました。では、コラーゲン注入で使われるコラーゲンはどの状態のコラーゲンでしょうか?

プロコラーゲン? トロポコラーゲン? コラーゲン細線維? コラーゲン線維束?

答えはどれでもありません。注入用コラーゲン製剤として利用するためには、もう少し処理をしてからでないと使えないのです。

コラーゲン分子の中で最も抗原性が高い(=アレルギー反応を起こす原因となりやすい)部分は「テロペプチド」です。ペプシンのような蛋白質分解酵素をコラーゲンに作用させると、テロペプチド部分が切断され、線維を形成していたコラーゲン分子をバラバラの状態にすることができます。これを「線維の可溶化(かようか)」といい、これによって作られたコラーゲンを「アテロコラーゲン」といいます。

アテロコラーゲンではテロペプチド部分が削除されており、非常に抗原性が低いためコラーゲン注入に利用することができます(これは「牛由来のコラーゲン注入製剤」、および「ヒト由来のコラーゲン注入製剤」の両者で行われている処理方法です)。


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