避けることのできない加齢要因(線維系の機能障害)
若々しい張りのある皮膚はシワの多い皮膚と比べてどこに違いがあるのでしょうか?
それにはまず皮膚の中に豊富に含まれる2種類の線維を理解しなくてはなりません。それらは「コラーゲン線維」と「弾性繊維」です。
コラーゲン線維は「皮膚の張力」として皮膚内部の膨張や伸展に抵抗して一定以上の変形を許さないように作用しています。これに対して弾性繊維は「皮膚の収縮力」、すなわち皮膚に生じた変形を元に戻すための力として作用しています。
老化とともに皮膚がたるんでシワが増えてくるということは、「張力を担当しているコラーゲン線維」と「収縮力を担当している弾性繊維」が本来の役割を果たせなくなってきていることを意味しています。もちろんこれらの要因に加えて、ヒアルロン酸をはじめとする皮膚の細胞間基質量も減ってくるという影響も無視できません。
話を「老化による線維系の機能不全」に戻しましょう!
張りのある小児期の皮膚において、コラーゲン線維束(せんいそく)は直線的な配列をしながら複数の層を形成しています。筋肉の動きによって皮膚はどのような方向に引き延ばされるか分かりませんので、様々な方向に向かって直線的にコラーゲン線維束が配列された層を積み重ねておくことによって対応しています。
弾性繊維はコラーゲン線維束とは全く別の独立した存在として、コラーゲン線維束の間に網目状に拡がっています。
「皮膚の張力」を担うコラーゲン線維と「皮膚の収縮力」を担う弾性繊維が、お互いに独立した存在として生体内で機能することによって張力と収縮力という相反する働きを皮膚に可能とさせているのです。
成長期にはコラーゲン線維束がどんどん産生され、発達し、真皮の大部分を占めるようになります。その際にコラーゲン線維束はゴムのような性質の弾性線維を圧排して、弾性線維の規則的な配列を乱します。
しかし、この時期の弾性線維は柔軟性があり、コラーゲン線維束によって伸展、変形されても元の状態に戻る力を発揮することができます。逆を言えば、このような負荷が弾性線維にかかることによって、その強い収縮力が発揮されて張りのある若々しい皮膚を作り出しているとも言えます。
しかし成長期を過ぎると、そうもいかなくなります。徐々に弾力性に乏しくなった弾性線維は、コラーゲン線維束による長期間の屈曲や変形に耐えることができなくなります。つまり「折れ曲がったままの弾性線維」となるのです。
生体内における成長期までの弾性線維の状態を思い出してみて下さい。そう、「直線的な網目状のネットワークを持ち、種々の力に抵抗し皮膚収縮させ引き締める」ことができるのが弾性線維でしたよね。この「折れ曲がったままの弾性線維」となってしまうことが皮膚の収縮力を低下させる1つ目の要因です。
更に変化は加速します。
弾性線維も新陳代謝を行いますが、コラーゲン線維束に圧排された状態では新しく作られる弾性線維も折れ曲がった状態で置き換えられます。
つまり「網目状のネットワークには直線的にならず、曲がったままの状態で補強され続ける」ということです。これが2つ目の要因です。
その上新たな弾性線維は既に存在するコラーゲン線維束と絡み合いつつ再構築されます。本来、コラーゲン線維束が作る「皮膚がある一定以上膨張しないための張力を担う線維系ネットワーク」と、弾性線維が作る「風船のような収縮力を皮膚に与えるための線維系ネットワーク」は独立して機能することによってお互いが100%の力を発揮してきました。
この独立性が損なわれることが皮膚の収縮力を低下させる3つ目の要因です。
このような3つの要因は加齢によって生じるものなので、誰も避けて通ることができません。その結果、皮膚本来の収縮力を保持できないがゆえの「たるみ」が生じると、皮膚に加わる変形力も多方向に分散させることができずある一部分に負荷がかかり「シワ」が生じることになるのです。