皮膚における最大の敵は「紫外線(しがいせん)」です。この紫外線を浴びることによって皮膚が老化することを「光老化(ひかりろうか)」といいます。顔面の皮膚の老化のうち約80%はこの光老化といわれていますから、その影響力の大きさは容易に推測できると思います。
紫外線は皮膚の表皮(ひょうひ)に作用してシミや皮膚ガンを作るだけでなく、真皮(しんぴ)にも作用してシワの原因を作ります。
加齢した皮膚は、弾性線維の機能不全により徐々にその収縮力を失います(参考→避けることのできない加齢要因(線維系の機能障害))が、紫外線はまさにこの症状を加速度的に悪化させます。その変化が最も強く生じる場所は「真皮乳頭層(しんぴにゅうとうそう)」(参考→真皮内構造物の詳細)です。
解剖学的には真皮乳頭層は表皮と真皮網状層に挟まれた部分(下図、緑色の矢印の間)のことで、真皮の上端数%にしか過ぎず、その層は極めて薄いものです。
HE染色された正常皮膚組織を光学顕微鏡で見てみると、乳頭下血管叢より上方の真皮乳頭層は他の部分とちょっと違った性状であることに気が付きます。真皮網状層では太いコラーゲン繊維束がはっきり見えるのに対し、真皮乳頭層ではもっと細かいコラーゲン線維がより高密度に充満しています。
また特殊染色を行うと、真皮乳頭層では弾性線維も細くなっていることが観察できます。
紫外線は直接的に、もしくは間接的(炎症によって二次的に)に皮膚の細胞、繊維、そして基質に対して障害を与えます。真皮乳頭層において弾性線維が障害を受けると、それを修復するように弾性線維の産生が増加され沈着していきます。
そもそも成長期以降の皮膚では、弾性線維は歪んだ形で存在しています(参照→避けることのできない加齢要因(線維系の機能障害))。そこへ弾性線維が増産されると次々に沈着し、最終的には真皮乳頭層が「異常な弾性線維」で置き換わってしまいます。これを「日光性弾力繊維症(にっこうせいだんりょくせんいしょう)」といいます。。
残念なことにこの変化は不可逆性(ふかぎゃくせい:元に戻らない、という意味)です。
こうなってしまった皮膚は硬くなり、柔軟性を失います。加齢によって誰にでも生じるシワが悪化するだけでなく、特殊なより深いシワも認められるようになります。農業や漁業を長年営んでこられた方の顔面によく見られる「硬そうな皮膚と深いシワ」といえば想像していただけるかと思います。
美容上、皮膚にとって紫外線は完全に有害です。シミ、シワ、そして皮膚ガンを予防するためにも日焼け止め(サンスクリーン剤)は積極的に使っていきましょう!